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2010年6月

2010年6月30日 (水)

トラウマを克服した日

 皆様お久しぶりです。開設当時の更新頻度に戻ってしまった−と言えばそれまでなのですが、今月はいつもの地域取材や鉄道・バス趣味も少なめでした。何をやっていたかと言うと、ほぼ1カ月の間、仕事以外は音楽活動に集中していました。

 小学校低学年のころまで、私はピアノを習っていました。バイエル教則本の90番ぐらいまでは弾けるようになり、これからの上達を両親も期待していたようです。財政が決して豊かとは言えないはずの我が家に、ヤマハ製の本格的なアップライトピアノが据え付けられるほどでした。
 そんなある日、ピアノの先生は突然、練習のテキストをバイエルから他の教則本に変えました。先生なりのレベルアップ策ではあったのかもしれませんが、今までと全く違う楽譜が目の前に現れて、私は鍵盤が弾けなくなりました。急速に意欲をなくした私は、間もなくピアノ教室を辞め、せっかくの自宅ピアノは調律もされずホコリをかぶる結果に。そして残されたものは、「自分には音楽を作ったり演奏したりすることはできない」というトラウマでした。10年後に業者が解体して持ち出すまで、自宅を無駄に占領していたピアノを見るたび、自分は身の置き所がないと感じたものです。

 ただ、音楽を聴くこと自体は続けており、クラシックを中心にFM放送のエアチェックも趣味にしていました。楽譜も通常のピアノ譜面、簡単なスコアなら、一応メロディーを追える程度の力も持っていました。この経験が、音楽演奏をやめて40年以上たった今日、突如としてパワーを発揮するとは想像もしませんでしたが…。

 5月11日のエントリで触れたVOCALOIDですが、私も2008年はじめに初音ミクを購入していました。クラシックの歌曲の楽譜があったので、ピアノ伴奏ともども譜面通りに打ち込んで歌わせてみました。ほとんど調整らしい調整をしていないべた打ちの歌声は電子音の域を出ず、伴奏も平板で、当時人気があったSNSサイト「ミクシィ」で公開したものの当然のように黙殺されてしまいました。
 「やっぱり自分には駄目なんだ」…心は折れたままでした。
 その後もニコニコ動画で、さまざまな作曲家のVOCALOIDオリジナル曲を楽しんでいましたが、しばらくは聴いているだけでした。2009年夏にメグッポイドを買ったものの、しばらくはPCの肥やしでした。

 転機は突然やってきました。
 VOCALOIDの中でも特に、メグッポイドの魅力にひかれた私は、ニコニコ動画で作品紹介のストリーミング生放送を毎週開催したり、外部検索サイトで楽曲を積極的に紹介したりしていました。その縁で何名かのVOCALOIDプロデューサーとも日常的に交流が生まれていました。
 そんな中、4月29日に初音ミク歌唱による「ARiA」(作詞・作曲=とくP)という楽曲が、ニコ動で公開されました。何名もの本職クリエーターが制作に携わったこの作品は、音楽もアニメーションもプロ仕様の出来映えで、私を含めたVOCALOIDファンの度肝を抜くことになります。
 しかしながらtwitterなどでファンやプロデューサーの意見を収集すると、作品への称賛は当然でしたが、意外にも「心が折れた」という声が多く聴かれたのです。要するに、ここまで凄い作品は自分に作れるわけがないという気持ちです。
 どうして? これまで素敵な音楽を作ってきた人たちが、なぜそんなことを言うの? 急に激しい気持ちがわき上がってきた私は、twitter上でこう叫びました。
 「ボーカロイドを持っている皆さん、心が折れたなんて言っている場合じゃないです。歌わせてあげましょうよ!思いっきりかわいく!私も頑張るから!」

 この一言を発したとたん、いつも懇意にしているメグッポイド曲プロデューサーの何人もがリツイート(発言を引用して自分のフォロワーに知らせること)で即座に反応。同時に、自分で発した言葉によって、自身にもスイッチが入りました。制作環境は既にそろっている。後は、かわいく歌わせてあげて、発表するだけ!

 後は、自分のどこにこれほどのパワーがあったのか、信じられないほどのペースで進みました。メグッポイドで歌唱データを作って、声の大きさやイントネーションなどを、あきることなく毎日調整。伴奏はMacintoshソフトのGarageBandで、標準装備の素材データを徹底的に改造してメロディーラインに合わせ、単純な打ち込みでは得られないオケ作りに成功。映像は麻生台団地の自室で撮ったものを使い、演奏時間1分の小曲ながら1カ月たっぷり愛を注ぎました。
 その結果、作詞も作曲も演奏も全部自分の手になる作品を、先週ついにニコ動で公開するまでにこぎつけました。音楽家になれないトラウマを、自分自身で打ち破った瞬間でした。
 うれしかったのは、公開直後から多くのリスナーに聴かれ、コメントを頂いたことです。音楽と真剣勝負している同好のプロデューサーの方々からも、好意的な感想が寄せられました。自分の歌がだれかに届いている−という、生まれて初めての経験に、胸が熱くなるのを抑えられませんでした。

 ここから得た教訓は、トラウマとかいっても所詮は根拠の弱い思いこみに過ぎないということ。考え方をちょっと変えるだけで、自分の可能性は思わぬところに解放されるということでした。
 だから、心が折れたと嘆く前に、心を奮い立たせて挑戦してみる。試す価値は十分あると思うのです。VOCALOID2、メグッポイドはそのことを私に教えてくれたことで、一生忘れられない製品になりそうです。

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